※今回の記事は『はま太郎』12号「編集部の書棚」より転載記事となります。
今後不定期で(気まぐれではありますが)『はま太郎』バックナンバーより一部記事を抜粋してのご紹介をしていけたらと思います。そして、気まぐれで書下ろしの読書録も掲載していく所存です。
『羊料理の本』と初めての関西出張
京都のレティシア書房を訪れたのは2016年9月中旬のこと。
このとき編集部は初めての関西営業出張を敢行していた。書店営業はだいたい飛び込みで行う。その日は、関西1日目の京都駅前だった。深夜バスを降りたばかりで朦朧とするなか、「勢いだけでやって来てしまったけど、相手にされなかったらどうしよう」という不安で胸がいっぱいだった。
以前から気になっていた書店をリストアップした紙切れを見つめながら、営業第一店舗として訪れることに決めた書店が中京区瓦町のレティシア書房。古書と直取引で仕入れる新刊、個人が作るリトルプレスなどを扱う、ギャラリーを併設した店だ。
果たして自社の本がこの書店の書棚に受け入れてもらえるかどうか。緊張しながら店の扉を開けると、目に飛び込んできたのが目の覚めるようなピンク色のこの本、『羊料理の本』だった。
弊社が「星羊社」という社名だけに、「羊」が付くものは思わず手に取ってしまうのだが、扉を開けて目の前にあったこの本に運命というか、幸先の良さというか、これからはじまる関西営業に何かいいものがありそうだと感じてしまった。
この料理本で紹介するレシピで使う材料には、ラムチャップやロースなど、比較的手軽に揃う部位もあるのだが、珍しい部位も多く扱われている。というのも、同書のコンセプトが「羊丸ごと1頭料理する」というものだから。
そういえば、昨年の暮、グルメな大谷能生さん夫妻が我が家にやってきたとき振舞ったラムチャップの味付けがどうも納得がいかなかったのだけど、料理人である著者のオリジナルソースで試してみたらどうなるだろうか。羊というものの生態、その鳴き声と優しい性格、山羊とは違う神秘性などから羊料理の魅力を紹介するこの本。羊にまつわるネタをひとつふたつ拝借して、羊料理を客人に振舞えたなら、晩さん会がより楽しいものになるだろう、などと夢を見てしまう。
「羊飼い」こと、羊研究家の武藤浩史氏と、海を渡り世界の羊料理法を学んだ羊料理第一人者の河内忠一氏の、「これだけ魅力的な羊だからこそ、余すところなく食べるべきなのだ」という切実な想いが綴られている。
早速、横浜橋通商店街の白井肉店に行くことにした。最近では曙町のサミットでも常時羊肉を扱うようになった。エキゾチックな雰囲気漂うこの界隈では割と簡単に羊肉が手に入るのだ。
さて、初めての関西営業の件であるが、ありがたいことに弊社本は即決でレティシア書房の書棚に並べてもらえることになった。しかも予定されていた陶器展の会期にあわせてコーナーまで設けてくれることになったのだった。 羊様様である。
『羊料理の本』 武藤浩史・河内忠一/スピナッツ
(『はま太郎』12号「編集部の書棚」より転載)
(文責/成田)
上記記事を掲載した『はま太郎』12号の刊行後、レティシア書房の小西さんからご連絡。なんでも著者の武藤浩史氏(羊飼い)は小西さんの奥様の弟さんだそうだ。
武藤さんのHP「茶路めん羊牧場」。北海道にある牧場での生活、羊レシピなどを綴った情報満載の楽しいHPです。